「書く仕事」を続けるための、「文章力」以外の技術。意外にも普通の会社員にも刺さることばかりで、胸が熱くも痛い1冊となった。まだ「書く仕事」をしていない立場として、普通の会社員の胸に響いた箇所をメインに紹介したい。
著者の佐藤友美(さとうゆみ)さんは、通称さとゆみと呼ばれ、21年以上フリーランスのライターをされている。長年の経験に基づく、非常に読みやすい文章も魅力的である。
本の概要:『書く仕事がしたい』_佐藤友美
- この本の概要
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書く仕事、主にライターと呼ばれる仕事の、「文章力」以外の技術について。ライター歴21年の著者が明かす、誰よりもしつこく真剣に向き合ってきた「書く仕事」の「書く以外のこと」。全5章。
- この本はこんな人におすすめ
-
・ライターに興味があるものの、仕事内容がわからない方。
・これからライターとして生計を立てていきたい人。
・ライターではないけれど、他業種の仕事論を知りたい人。
書く仕事がしたい
- 著者:佐藤 友美(さとう ゆみ)
- 出版社:株式会社CCCメディアハウス
- 初版:2021年11月6日
- サイズ:13.7 x 2.2 x 18.8 cm
- 重さ:336g
- ページ数:336ページ
- 定価:1650円
読みやすさ | 面白さ | 専門性 |
★★★★★ | ★★★☆☆ | ★★★★★ |
- この本の概要
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書く仕事、主にライターと呼ばれる仕事の、「文章力」以外の技術について。ライター歴21年の著者が明かす、誰よりもしつこく真剣に向き合ってきた「書く仕事」の「書く以外のこと」。全5章。
- この本はこんな人におすすめ
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・ライターに興味があるものの、仕事内容がわからない方。
・これからライターとして生計を立てていきたい人。
・ライターではないけれど、他業種の仕事論を知りたい人。
著者の紹介
ライター/コラムニスト
フリーランスのライターとして活動は21年を超える。(2021年初版の著書『書く仕事がしたい』にて記載)
ベストセラー『女の運命は髪で変わる』(サンマーク出版)の著者。
「生まれてはじめて1冊読み切った」と読者から感想が続々届く「わかりやすい文章」を書くライターとして知られる。
書く仕事がしたい_佐藤友美
↓オフィシャルサイト参照
書く仕事を得られる人は、レベルはそこそこだが必ず締め切りを守る人
原稿が上手くて締め切りに1日遅れるライターさんより、原稿はそこそこでも必ず締め切りを守るライターさんに頼む
書く仕事がしたい_佐藤友美 p9_Prologue
”期日ぎりぎりになって90点で持ってこられるより、早いうちに60点で持ってきてもらった方がありがたい”。上司からそのような主旨の指摘を受けたことがある。当時は若くていまいちピンときていなかったが、今なら少しわかる。本書で語られる原稿の提出先は、編集者である。編集者の目線からすると、原稿は自分でも修正できるが、何もあがってこないうちは、何も手を付けられない、ということのよう。私の上司もそう思ったに違いない。
ビジネスにおいては、ベル研究所のトム・カーギルが提唱した90対90の法則はこう解釈される。”0点から90点までにかかる時間と、90点から100点までにかかる時間は同じなので、90点でいいから提出(アウトプット)するべき”と。なんなら60点で十分という主張もあるようだ。
本書で説明があるが、ライターと編集者は重要なビジネスパートナーである。仕事はライター(=自分)だけでは完結しないのだ。どの仕事にも通ずる、全体を見て最適な行動をする技術の第一歩である。
外注するか、自分でするかの判断基準が明確
①自分の時給よりも低い価格でお願いできるもの
②自分がやる必要がないもの
③自分でやっても楽しくないもの
のすべてが当てはまったら、外注すると決めています。
書く仕事がしたい_佐藤友美 p255_Chapter 4 書く仕事に必要なマインド
普通の会社員であれば、「人に任せる」か「自分でやる」か、の判断は難しいと思う。余裕があれば自分でやるし、余裕がなくても自分でやる、と言う調子で何も判断していないことも多いのではないだろうか。しかし、自分でできることは限られている。人に任せるか否かの判断基準を、著者のように明確に設けている人は少ないのではないだろうか。もちろん各々置かれている状況にもよるが、検討もせずに仕事を抱えていては、非効率なままだ。
これは本当に自分がやるべき仕事なのだろうか、と一度立ち止まることをやめてはならないと最近は思う。
信頼されると、人を通じて新しい仕事が入ってくる
売り込み以外で新規の仕事を増やしたいときに、一番有効なのは、実は「現在の仕事を頑張ること」です。
仕事は、常に「人」からやってきます。
書く仕事がしたい_佐藤友美 p263_Chapter 4 書く仕事に必要なマインド
フリーランス、という立場であれば、新しい仕事を得られるかどうかは、喫緊の課題だろう。人から仕事をいただくためには著者曰く、相手に信頼されていることを前提に、自分を知ってもらっている状態、が重要ということであった。信頼されるために「現在の仕事を頑張ること」が有効であるということだろう。
私のような一企業の平社員でも、「人」から仕事がやってきた、と言う経験はある。現在の仕事の延長線上にあるようなものだった。関連部署や上位組織からの声掛けである。「なぜ私が?」と思ったが、確かに過去の仕事内容を振り返れば、適当と判断されるのもわかる気がした。特に意識していなかったが、真面目にやってきた部分を、誰かが見てくれていて、それが「信頼」につながったと思っている。それが著者が言う「現在の仕事を頑張ること」だったのだと思う。
自己分析できることの強み
私の手持ちの能力のうち、一番強いカードは「メタ認知能力」だったと思います。
書く仕事がしたい_佐藤友美 p263_Chapter 5 とどまらずに伸びていくこと
(私などが申し上げるのは非常に恐縮ではあるが、)この本全体を通じて、著者は非常に自己分析ができている人と感じた。非常に冷静に自分を見ている。「書く仕事」を取り巻く環境を俯瞰して、その中で自分がどのように動くことが最適なのか常に考えているようであった。これは、この本の根幹である、「書く仕事」の「書く以外のこと」について分析し、戦略を立ててきた土台にあるものと思われる。
私は、私の仕事を取り巻く環境を俯瞰して、一番最適に動けているのだろうか。30代になって、自分のことはわかってきたつもりになっていた。著者がしつこいほど向き合ってきた「書く以外のこと」の戦略は、私たちの仕事への向き合い方を見直させてくれた。
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